アフリカの子どもたちの元気な笑顔が見える
日時: 2009年07月23日 17:30 | コメント (0) | トラックバック (0)
20円でできること。「TABLE FOR TWO」
世界に貧困問題があることを私たちは皆知っています。しかし問題があまりに遠大過ぎて、個人ができることなんて高が知れている、と目をつぶってしまうのも無理はありません。それでも、できることはあると立ち上がり、誰でも無理なく貢献できる仕組みを作り上げて事業にしてしまった社会企業家がいます。
今、世界の人口約67億人のうち、日本など私たち先進国の10億人は食べ過ぎで肥満やメタボリック症候群に悩んでいる一方、最貧国の10億人は食事も満足に取れないのが現実です。そこで企業の社員食堂などで低カロリーのヘルシーメニューを作ってメタボ対策を図りつつ、その値段に20円を上乗せして寄付金に回すことで、アフリカの子どもたちに給食1食分を提供するのが「TABLE FOR TWO」(2人のための食卓)の仕組みです。この名前には、「一つの食卓を囲み、先進国の参加者と、開発途上国の子どもが、時間と空間を越えて一緒に食事をしている」という意味が込められています。
自分の健康を考えて普通にランチを食べることが、そのまま社会貢献にもなるので、募金キャンペーンなどと違って身構えることなく、毎日の食事を通じていつでも抵抗なく参加することができます。
寄付金で給食サービスを受けているのは、貧困が深刻なウガンダ、ルワンダ、マラウィ3カ国の子どもたち。温かい食事をお腹いっぱい食べられることだけで、学校に通う理由となり、勉強に集中できるようになって高等教育へ進む動機となり、貧困から抜け出す機会になるのです。
日本人が発案して世界に通じる貢献を
このアイデアの発端は2006年夏、カナダのバンクーバーで行われたヤング・グローバル・リーダーズ会議でした。テーマは「世界の飢餓と飽食」。その前の年に世界経済フォーラムが認定した40歳以下の若手、「ヤング・グローバル・リーダー」に、近藤正晃ジェームスさんら日本人が数人選ばれて、この会議に参加していました。日本人が発案して世界に通じる貢献を、と考えて生まれたのがこの「TABLE FOR TWO」(以下、TFT)のコンセプトでした。2007年2月にこのプロジェクトを初めて実施しましたが、彼らは多忙を極める本業を別に抱えていて、このアイデアの普及はなかなか進みませんでした。この年の夏、近藤さんは前職の後輩だった小暮真久さんを誘います。「TFTの事業で起業してみないか?専任で実務の指揮をとって欲しい」。
小暮さんは、TFTの考えに大いに共感して起業を決意、会社勤めを辞めて11月にはNPO法人「TABLE FOR TWO International」を設立して事務局長になりました。
世の中のためになる仕事をしたい
小暮さんは、人工心臓の研究で留学してからマッキンゼーの戦略コンサルタントとなり、その後実業で経験を積みたいとエンターテインメント業界の松竹に入社した特異な経歴の持ち主です。何か物足りなさを感じ、「世の中のためになる仕事をしたい」と考えていた矢先にTFTの運用を任されることになったのです。
「縁あってTFTに出会えたと思っています」と小暮さんは言います。「今はアフリカに行って子どもたちの笑顔を見るのが一番楽しい。事業として企業相手に自分の好きなことを実現できる。TFTに関わる人の目が変わってくるのを実感しています」と大きな手ごたえを感じています。
とはいえ、常勤スタッフは小暮さん本人を含めて2名と最小限。今でもNPOをビジネスではなくボランティアと誤解する人が多い中で、コツコツと協力してくれる企業を増やしていきました。最も大きなインパクトがあったのが、りそな銀行がTFTを導入してくれたこと、と小暮さんは振り返ります。
すぐにでもやりたい
りそな銀行は2003年に経営危機から公的資金を注入されています。2007年10月、持ち株会社りそなホールディングスでCSR担当に異動してきたばかりの桑原崇マネージャーは、できるだけ早く公的資金を返済していくことが最優先とされる中で、銀行としてお金ではなく社員の想いを形にして社会貢献できることはないか、悩んでいました。そのときにTFTのことを知りました。
桑原さんは、TFTに積極的にアプローチします。まだ準備ができていないからもう少し待ってくださいという返事に、「モデルケースとして実験台になってもいいから」と一緒になってプログラム導入を進めていきました。こうして2008年1月に試験導入を開始。初日には会長と社長もTFTメニューを食べて社員の参加意識を盛り上げました。
それまでにTFTを導入している企業も他に何社かありましたが、同年3月からは毎日継続的にTFTメニューを提供する世界初のケースになりました。メディアにも取り上げられたことで、この頃から、りそな銀行の取り組みを見学に訪れる企業の数が増えました。
実際のメニュー開発と運用は給食会社の協力が不可欠です。りそな銀行の東京本社と大阪本社で社員食堂サービスを提供しているのがエームサービス。元々ヘルシー志向の女性向けに低カロリーメニューを提供していたのを、TFTプログラムに応用しました。喜納昌信支配人は、「ボリューム感を出すことが一番難しいが、シーズンごとにメニューを毎日変えています」と言います。
メタボ対策が狙いに加わり、社会貢献もできるとあって、TFTメニューを注文する男性も多いそうです。桑原さんのようになるべくTFTメニューを食べるように努めている人もいれば、メニューの内容によって食べたいときにだけ食べるという人も。その気軽さがいい、と社員の皆さんには大好評です。ちなみに、桑原さんはTFTメニューを食べ、健康を意識するようになって、1年余りで10キロ近く減量したそうです。
毎日の積み重ねで、今年6月のTFT利用数は、東京本社だけで4300食、大阪本社が2003食でした。透明性を重視しているので毎日の利用数を紙にして張り出し、東京と大阪で競い合っています。りそな銀行では、TFT導入以来、2009年3月末時点で、10万1000食以上の給食をアフリカの子どもたちに提供してきました。また、TFTメニューとは別に募金も合わせて受け付けているほか、NPO法人の振込先口座をりそな銀行に設けて、団体や個人からの振り込み手数料を無料にして協力しています。
想いを大切に
こうして協力してくれる企業や団体が増えていき、今では企業のほかにも官庁や大学など130団体がTFTを導入しています。これまでに累計で104万食をアフリカの子どもたちに提供してきました。また、社員食堂がなくても参加できるように、配達弁当や喫茶室のドリンクでTFTメニューを提供したり、協力先のレストランやコンビニ、食品宅配でも寄付金つきのTFTメニューを用意して個人で注文できるようになっています。
さらに日本発の社会貢献は、世界にも進出しています。2008年9月にニューヨークに支部を開設しました。
「想いを大切に」、小暮さんは著作本のサイン会でこう記してくれました。想いがつながった先には、アフリカの子どもたちの元気な笑顔がありました。
