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ホテルに見る循環型社会の都市モデル
日時: 2009年06月15日 18:47 | コメント (0) | トラックバック (0)
快適さと環境配慮の両立を求めて
地球環境保全が世間の注目を浴びるずっと前から、コツコツと独自の循環型社会を構築してきた都市モデルがあります。東京・紀尾井町のホテルニューオータニは、東京オリンピック開催の1964年に開業しました。当時から東洋一の規模と言われ、その後もガーデンタワー棟やオフィスビルを併設、現在では、客室数1,479室、1日の利用者平均が1万5,000人という複合型コミュニティとして24時間活動を続けています。小さな都市ともいえるホテルニューオータニは、エネルギーや水・生ゴミなどを循環するシステムを導入し、ラグジュアリーでありながら、地球環境にも配慮したホテルを目指してきました。
その最も進化した形が、総工費100億円を投じて2007年10月に完成した 「ザ・メイン」(本館)のリニューアルで実現しました。このプロジェクトにより、CO2排出量を28%、エネルギー使用量では22.7%を削減しました。まず、全室の天井から足元まで、全面ガラス張りの「フルハイトウインドウ」を導入。断熱性と紫外線遮蔽率の極めて高い2枚のガラスで乾燥した空気を挟み込む3層構造になっていて、屋内外の温度伝達を抑え、冷暖房の負荷を大幅に減らしました。従来型の単層ガラスと比べ、熱伝導と紫外線を約50%カットしています。
さらに最上階の17階にある回転展望レストラン、「VIEW & DINING THE Sky」の厨房にオール電化システムを採用しました。熱の排出が少なく、厨房とテーブル席の温度差をなくして「見えるキッチン化」を実現、エネルギー使用量とCO2排出量を削減しました。また、レストランから見える2階と16階の屋上を緑化し、ヒートアイランド現象を緩和、階下では真夏の昼間の温度が15℃以上も下がっています。
独自開発の空調システム
リニューアルの目玉となるのが、共同で独自開発した空調システム「AEMS(エイムス)」です。冷却と加熱で熱を移動させるヒートポンプとIT制御でエネルギーを効率的に利用します。体感温度には個人差があるので、ホテルでは常時冷房と暖房が必要になりますが、各部屋の冷暖房機器や厨房からの排熱を回収してエネルギーを相互利用し、部屋ごとの細かい温度・風量を設定、更にはチェックイン/アウトに連動して稼動するとともに、季節や日照時間に合わせて運用を細かくコントロールして最適化することができます。本館の全室643室に導入し、客室の空調に限ってみるとエネルギー使用量を70%削減しています。このシステムは、関連会社を通じて事業展開し、これまでに他のホテルやオフィスビルなどにも採用されています。
マネージメントサービス部の八代隆行・広報マネージャーはこう振り返ります。「1964年の開業当時、先代社長の考え方としては、人の役に立つものをという考えが大きかった。その中で、我々が企業として何ができるか考え、できることから少しずつやってきました。少しずつ積み重ねてきたものがようやく2007年に本館のリニューアルができたときに、ある程度一つの形として完成できた、という感じです」
エネルギーマネジメントが中核
ニューオータニがエネルギー・リサイクルと省エネルギーを本格的に導入し始めたのは、オフィスビル棟の「ガーデンコート」を開業した91年。地下室に電力と蒸気を同時に発生する「コジェネレーション・プラント」を設置してからです。停電時には非常用電源に切り替わる兼用型の常用コジェネレーターの導入は、当時は民間で初めてのことでした。出力1500kwの発電機が3台、必要な電力量に応じて発電量を調節し、排熱を利用して蒸気を発生させて給湯や暖房に利用します。これ以降、エネルギーマネジメントは、ニューオータニの環境対策の中核になります。実際、電気・ガスのエネルギー経費は、1991年をピークに右肩下がりで減り続けています。
「CO2を削減するために我々は環境対策を色々やっていますが、最後につながるところは、やはりエネルギーなんです。いかにエネルギーを有効に使うか、エネルギーを削減することによって環境対策につながっていくのです」とファシリティマネージメント部の山本正巳マネージャーは語ります。
ニューオータニは、環境に配慮した循環型社会の実現を目指して“R-economy”を掲げています。「R」とは、Recycle(リサイクルシステム)、Reuse(資源の再利用)、Reduce(廃棄物の減量化)を推進し、効率化と環境問題の同時解決を目指すものです。
この考えに基づき、50ヶ所の厨房から出る1日約1,000tの排水を再利用する「中水造水プラント」を1991年に導入しました。「中水造水プラント」は、排水からゴミを除去し、タンパク質や油分を微生物で分解、ろ過・活性炭で臭いを除去して、最大600tの中水を作り出します。中水は、敷地内の灌水、ザ・メインの2階以下のトイレの洗浄水、洗車などに活用、水道水の利用を 大幅に削減し、川や海といった自然への負荷低下に貢献しています。
熱資源の回収・再利用も積極的に進めています。氷蓄熱プラント、冷水を貯める水蓄熱プラント、蒸気を貯めるスチームアキュムレーターを次々と導入し、余った熱を回収して蓄熱、必要な時に利用する効率的なシステムを作り上げています。
「蓄熱という精神は、先代の創業者、大谷米太郎が『貯金をしなさい。タネ銭を貯めなさい。使ってないときは貯めて、使うときに使いなさい』と言っていたことに根ざしています。我々にとっては蓄熱は貯めると言うことですから、貯めて必要な時に使うという精神がこういうところに生かされているのです。ですから、昨日今日の話じゃないのです。この精神がずっと息づいている。ですから必要なときには思いっきり投資もしましたよ。だからこんなに大きな設備ができたんだと思います」と山本マネージャーは語ります。
生ゴミを100%リサイクル
また、ゴミの分別とリサイクルは徹底しています。ホテル全体のゴミの量の約46%が調理くずや食べ残し、生花などの生ゴミです。1日5tの生ゴミをリサイクルする「コンポスト・プラント」も1999年に完成しました。コジェネレーターで発生する蒸気の一部を使って乾燥し、さらに発酵させて毎月約30tの普通肥料を生産しています。二次発酵させて堆肥を作り、一部を茨城県の契約農家で独自ブランド米の栽培に使用、収穫した無農薬米「おおたに こしひかり」を年間21t、ホテルの社員食堂などに提供しています。この循環型リサイクルシステムの導入により、生ゴミの100%リサイクルを実現しました。ダイオキシンを出さないと同時に、当時で年間3400万円(現在換算で約5000万円)の生ゴミ焼却処分費を削減することで、プラントの費用1億1000万円を4年足らずで回収した計算です。
「これは一石何鳥の機械です。今までゴミとして厄介者として扱っていたのが、きちんと分別して手を加え、機械で処理をすることで宝の山になる。そしてそれをまた有機堆肥として有効に使っていただく。それこそ一石何鳥、どこに持って行っても誇れるプラントです」と山本さんは胸を張ります。山本さんは、徹底したゴミ分別の講習会を新入社員研修ではもちろん、入居しているテナントも含めて実施しています。
進化する環境対策
そのほか、2000年には屋上緑化を導入。宴会場の屋上に「ローズガーデン」が誕生しました。約2500m2の敷地に約30種類の赤いバラ約2000株が栽培され、主に結婚式場として利用されています。
こうした循環型システムの取り組みは評価され、2003年には第12回地球環境大賞で日本工業新聞社賞を受賞、さらには地球温暖化防止活動として環境大臣から表彰されています。また春休み、ゴールデンウィークと夏休みに、子ども向けの環境施設見学宿泊プランを実施して、普段見られない舞台裏の取り組みを公開しています。
八代マネージャーは、循環型モデルへの取り組みが社員の誇りにつながっていると言います。「環境に対してだけで一気にこれをやろうとしても、相当なお金もかかりますし、企業として、これだけのことができるかと言えば到底できないと思うんですよ。新入社員の研修のときからこういうことを学んで、講習会もきちんとやっているので、社員一人一人が持つ意識は高いかもしれませんね」
挑戦は続きます。現在、さらに空いている屋上に、太陽光発電パネルを設置する案も検討中だそうです。ニューオータニの環境対策は進化しているのです。
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