« 天孫降臨の地、宮崎に元気の素を発見! |メイン| 社内コミュニケーションは投資。効果は広告換算? »
感謝と感動の連鎖。それが元気への処方箋。
投稿者: 研究所 所員 日時: 2008年06月26日 15:11 | コメント (0) | トラックバック (0)
それは一人の社員の情熱から始まった
元気な組織があります。社内に一歩足を踏み入れると、擦れ違う社員の方々からすかさず「こんにちは。いらっしゃいませ」と笑顔で声がかかるのです。そこはお店ではありません、普通のオフィスです。さらにお昼どきで混み合うエレベーターを待っていると、満員でも「お客様がお待ちです」と声が上がり、中にいた社員の方が降りてくれて譲ってくれるのです。そんなお客様本位の元気な会社が、ANA(全日本空輸株式会社)とそのグループ企業です。
今回、取材してまず感心したのは、元から元気だったわけではない、ということです。1999年に当時30代前半だった清水良浩さんは、国際貨物のマーケティング部門から羽田空港の総務部門に異動しました。この時、清水さんが感じたのは、航空事業はパイロット、整備士等、プロ集団の集まりであることから、ややもすると部門間の横の連携が疎かになりがちな傾向が見られる、ということでした。当時の航空業界は需要の低迷と競争激化によりコスト削減が至上命題。契約社員の採用拡大など雇用体系の多様化を進めつつ、社内のコミュニケーション不足を補うことが重要課題であったそうです。特に、2001年9月の米国同時多発テロ以降、SARS、鳥インフルエンザなどの影響もあり、航空業界各社はどこも経営の危機に直面し、背水の陣で事業構造の改革に臨んでいたころです。
清水さんは、このような中で職場の雰囲気やモチベーションを向上させる必要を感じる一方、全員が一丸となってお客様視点で業務を遂行しているか、危機感を感じて動き始めました。「どうしたら多くの社員の気持ちを一体化できるのか、正直わからなかった」と清水さんは振り返ります。社員の仕事をお客様の満足につなげるために、清水さんは社員が共有すべき価値観であるCS(Customer Satisfaction=顧客満足)に注目し、同じ問題意識を持つ後輩2人と、新たな活動「ほめる⇔ガンバルHaneda CS 21」に取り組み始めました。まずは、ベンチマークとしてDisneyの哲学、経営モデルを学び、‘航空会社の業務’に応用できないか検討しました。「お客様の歓びは我々の歓び」、この価値観をいかに現場のフロントラインを預かる社員の行動指針にまで浸み込ませることができるかが課題でした。
仕事に誇りと歓びを
そのツールの一つとして「Good Job Card」を導入しました。現場でお互いの仕事の良いところを見つけたら、カードに記入して相手に渡す。仲間の仕事を褒めることで、他人の仕事に関心を持ち、お互いの仕事に誇りを持つという風土を育むためでした。日頃、どうしても業務上のミスに目が行きがちな管理体制から脱皮する。そして地道な仕事でも隠れたファインプレーを社内に紹介する機会を作り、加点主義的なプラス思考を追求する姿勢を組織のスタンダードにしたい、その積み重ねの先にはきっとお客様の満足があるはずだ、そんな想いがあったのです。
「旅客担当 Mさんへ。 いつも責任持った細やかな業務に感謝します。備品担当、PIS(旅客情報システム)プロジェクトと先頭に立って一生懸命してくれているからこそ、業務がスムーズにいくと思い感謝しています。備品においても、PISにおいても、もっともっと皆に浸透できるよう私も頑張るね。THANKS! Iマネージャーより」
このような仲間からの感謝や感動の言葉が並びます。羽田空港の全員が参加する「Good Job Card」は、共感を呼ぶ事例を収集・共有し、月に1回、回報で得票者を表彰します。その結果、自分でも気付いていなかったことが仲間から感謝され、喜ばれたことで、自分の仕事に張り合いが出てきます。周りの人も「私もあの人のようにやればいいんだ」、「私も自分なりにCSに貢献することができるんだ」と気付きます。こうした積み重ねが組織を変える原動力となっていきました。
魂を入れるには個人の意識改革が必要
しかし、「ツールは所詮ツールであり、形式的に導入しただけでは成功しない」と清水さんは強調します。そこに魂を入れる、つまり個人一人ひとりの意識変革が不可欠だというのです。清水さんたちが最も力を入れたのが、丸一日がかりの「CS研修」でした。1カ月半で旅客係員を中心に約700人全員が受講しました。
まず、どうしたらCSでNO.1を誇れる空港を実現できるのか、理想と夢を語りあいます。その後、自分が日々働く姿をビデオで確認すると、皆で話し合った理想と夢とのギャップにショックを受けます。現実を認識した先輩の姿勢が変わると、後輩も自然と変わります。研修の最後は、最も重要な感動の共有体験です。喜んでいるお客様の笑顔を次々とビデオで見ると、皆が感動します。「お客様の歓びは我々の歓び」、この価値観で皆が一つになれるとき、共感が生まれます。一人ひとりの意識変化は、やがて全体の大きなうねりになります。
「羽田でできるならうちの空港でもできる」、この取り組みは、その後全社的取り組みへと発展していきました。組織的にも強化すべく、本社内に新たにCS推進室が設置され、Good Job Cardについては各事業所や現場、グループ企業ごとの取り組みとして、職場の状況に合わせた形態で自主的に導入されていきました。例えば整備部門はGood Spirit Cardとして、またある部門ではWebベースで部署を超えてメールのように送れるシステムもあるそうです。
「基本は職場の活性化のために自主的に取り組むことが大切です」とCS推進室の江島聖志さんは語ります。仲間からのメッセージやお客様からの声は、エピソード集にして全社員で共有し、具体的な行動をイメージします。こうした取り組みの中でANAらしさ「あんしん、あったか、あかるく元気」が2004年12月に制定されました。
元気は伝染する
今回、ANAの取材を通じて、一人の熱い想いが周囲を変え、組織を変え、やがて全社的取り組みとなってANAグループ全社員32,000人が元気になっていく様を見ました。
会社が元気になっていくには、社員が仕事に喜びを見い出し、一歩踏み出す勇気を持つこと。そのためには、自分の仕事が「お客様の喜びに繋がっている」、「自分は組織の中で役に立っているんだ」ということを実感できるよう、褒めたたえ合い感謝しあう風土が必要です。そして社員が一丸となって行動に踏み出していくためには、感動するストーリーを共有し、同じ価値観に共鳴する必要があります。感謝を伝え、感動を共有する、この感謝と感動の連鎖を通じ、社員の元気が広く職場全体に伝わっていくのです。しかし、そこで立ち止まることなく走り続けなければ、一度吹き込んだ魂は時とともに薄れていってしまいます。
ANAの毎月の給料明細の表紙には、お客様からの感謝のメッセージが紹介されています。お客様に支えられていることを改めて実感し、感謝するのです。また、それを見て歓ぶのは社員だけでない、その家族も喜んでいるそうです。へぇ~、父さんの仕事っていいことしてんだ…ここにも感謝と感動の連鎖があります。元気は伝染するんです。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.sofia-inc.net/cmt/mt-tb.cgi/33
